サルコペニア、ロコモティブ症候群、そしてフレイル

2021-05-27
内科領域においては、メタボの治療や管理を行うことは重要であり、将来的な心血管イベントや、脳梗塞などの動脈硬化症を予防する観点においては、特に30-60歳代からの予防管理を行うことが重要と考えます。しかし、いくらメタボの管理を十分に行っていても、転倒して骨折したり、寝たきりになってしまっては決して有意義な人生を送っているとは言えません。
 私は、生活習慣病管理と同等レベルに、運動器機能を維持することが重要であると考えています。いわゆるメタボとロコモは表裏一体であり、一括管理することが大切です。
 筋肉量をみても、標準値(健常者)は50歳を超えると急激に筋肉量が減少します。メタボリック症候群の一つである脂肪肝患者はさらに深刻で、健常者と比べてさらに10歳若い40歳代からすでに筋肉量の低下がみられています。
40代からの早い段階で、メタボの予防と同時に、ロコモ対策を打つことが、長寿の秘訣ではないでしょうか。そこで当クリニックでは、米国Hologic社のHorizon Ci(X線骨密度測定装置)を導入し、ロコモ対策としての骨粗鬆症診断に力を入れています。
 “加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態”を“フレイル”と呼ばれ、身体的フレイルの原因疾患として、サルコペニア(骨格筋量や質の低下)が主体であると考えられています。しかし実際には転倒・骨折といった骨・関節疾患が介護を要する主要要因となっているのは明らかです。一方で、ロコモという概念が日本整形外科学会から提唱され、その定義は運動器障害によって移動機能の低下を来たした状態とされています。高齢者の衰えを全人的に把握するためには、運動器疾患全体を身体的フレイルの主要な原因して位置づけ、ロコモ予防こそが身体的フレイル予防に繋がることを十分に理解する必要です。
当クリニックは、メタボと同時に、ロコモに目をやり、加齢による衰えを全人的なアプローチから予防していく、日本で初めてのクリニックです。