骨粗しょう症について

2021-04-21
骨粗しょう症は骨からカルシウムや正常な構造が失われ、もろくなる状態で、病的骨折や痛みの原因となります。病的骨折とは、ささいな外力で起こる骨折のことを言います。転倒による足の骨(大腿骨頚部)の骨折、重いものを持ったときなどの腰の骨(腰椎)の骨折、手をついたときなどの腕の骨(橈骨)の骨折などです。場合によってははっきりした要因がなくても骨折を起こすことがあります。こうした骨折を起こすと強い痛みが起こるばかりでなく、日常生活上、様々な不便が生じてきます。車椅子や寝たきりの状態になることもあります。この結果、肺炎などの感染症にかかりやすくなり、生命予後にも影響を与える場合も考えられます。
骨粗しょう症は一般に年齢の進行とともに増えてきます。特に女性の場合は、閉経後、急激に骨密度は低下してきます。近年、高齢化社会が進展し、高齢者の人口の割合が大きくなってきていることにより、骨粗しょう症の重要性は増し、社会的な関心も高まってきています。骨粗しょう症はまた、関節リウマチなど膠原病の合併症としても重要です。また、ステロイド薬(副腎皮質ステロイド:プレドニンなど)の副作用としても大きな問題となっています。
骨は一見すると変化のない固定したものと考えられがちですが、実は、ダイナミックに作られ、また、壊されています(骨のリモデリング)。骨の新生には骨芽細胞、骨の破壊には破骨細胞が働いています。骨芽細胞、破骨細胞の働きのバランスによって骨密度が変化するのです。骨を丈夫にするためには、このバランスの改善をはかる必要があります。骨粗しょう症の最善の予防策は若いときにしっかりした骨を作っておくことですが、骨密度が減少している場合には適切な食事や運動が更なる減少を防ぐ上で大切です。
必要な場合は、薬物による治療が行われます。従来、ビタミンD、カルシウム製剤などが投与されていました。閉経後の患者様には女性ホルモン製剤も用いられています。最近、骨密度の低下を防ぐことのできることがより客観的に評価されている薬剤が開発されてきています。ビスフォフォネートと呼ばれる薬剤です。商品名ではボナロン、フォサマック、アクトネル、ベネットがあります。これらの薬は飲み方が変わっていて、朝おきてすぐ飲まなければなりません。また30分間は横になったり、ものを食べてはいけません。今まで、毎日服用する必要がありましたが、一週間に1回でよい薬も出てきています。また、このほかにも骨粗しょう症に有効性の高い薬(エビスタ(閉経後の女性に用いられる)など)も使用されるようになりました。
まず、自分の骨密度がどの程度かを知ることが大切です。多くの医療機関で用いている簡易型の骨密度測定器は前腕部(うで)ではかります。しかし、前腕部の骨密度の測定は、ときに、全身的な骨密度を反映していない場合があります。特に関節リウマチなど関節部の炎症や疼痛を認める場合には不正確になりやすいと考えられます。当院では、より高性能の骨密度測定器を用い、全身的な骨量をより正確に反映し、また、病的骨折部位としても重要な腰椎、大腿骨で骨密度を測定します。
自分の骨密度を知った上で、骨密度の低下している方は、適切な食事、運動により骨粗しょう症への進展を防ぐことが大切になります。また、場合によっては薬物治療が適当になる場合があります。