関節リウマチは全身性疾患であるという側面と、関節疾患であるという側面を持っています。関節リウマチのもっとも多い症状である関節の痛みやこわばりは、関節疾患としての側面を反映しています。一方、だるさや発熱、体重の減少などは全身性疾患の側面を反映しています。さらに、患者様によっては肺や皮膚・心臓・眼・神経など関節以外の部分に病気が現れてくることがあります。
関節症状はとても大切です。痛みは患者様にとって大変つらい症状です。しかし、関節の炎症が持続することによって、骨の破壊が進行し、関節変形・強直(動かなくなること)などをきたすことによって、関節の機能障害が起こることがもっとも重要な問題です。
かつては関節リウマチに対する適切な治療法がなく、高度な機能障害に進行する患者様が多かったのですが、近年、関節リウマチの治療は大きく進歩し、大多数の患者様が普通の社会生活ができるようになってきています。これには、病気の進行そのものを抑える薬(抗リウマチ薬)が開発されてきたためです。今日では、関節リウマチと診断された患者様にはできるだけ早い段階から抗リウマチ薬による治療を開始すべきだと考えられています。そして、治療の目標は活動性ゼロを目指さなければなりません。このことによって、将来、生じる可能性のある関節の機能障害への進展を防ぐことができるからです。
関節リウマチの薬物療法の発展の中で、抗リウマチ薬には多くの薬剤が用いられるようになってきています。
現在、大きく4つの種類に分類されます。免疫調節薬、免疫抑制薬、生物学的製剤、JAK阻害薬の4種類です。
それぞれの薬剤には
抗リウマチ薬は関節リウマチの経過をずいぶん改善できるようになって来ましたが、まだ、いろいろな問題が残っています。その第一は特殊な薬(生物学的製剤と呼ばれている種類の薬剤)を除き、すぐには効かないということです。効果が出るまで、平均して2~3ヶ月かかります。したがって、今日、薬を始めても、明日からよくなるというわけではありません。その第二は100%有効な薬はないということです。平均すると有効率は50%程度です。つまり、効く人と効かない人がいるということです。したがって、ある薬をはじめて2~3ヶ月たったところで有効性を判断し、もし効かなかった場合には別の薬に切り替えなければなりません。この薬で、また、2~3ヶ月たったところで有効性を評価し、また無効であったらまた別の薬に切り替えます。このように、試行錯誤が必要で、時間もかかる根気強い治療が必要となります。しかし、幸いにして現在抗リウマチ薬は10種類以上(*)あり、たいていの場合に、患者様にあった薬が見つかります。第三の問題としては副作用の問題があります。どんな薬剤にも副作用の可能性はあります。副作用のない薬はありません。大切なことは、もし副作用が出たときにはできるだけ早く発見し、適切な対応を取るということです。このために、患者様には出現しやすい副作用を知っていただくとともに、体調の変わった点に注意していただくことが大切です。また、医療を提供する側としては診察や定期的な検査などを通じてできるだけ早く発見できるよう努めることが求められます。
多くの抗リウマチ薬の中からどの薬からはじめるべきかについては決まった方式はありません。一般に有効率の高い薬は副作用も強いということができます。したがって、早急に改善が必要な患者様(骨破壊などの変化が早い、または、炎症の程度が強い)には副作用の危険性がより高くてもより有効率の高い薬から始めるべきだと考えられます。関節リウマチの骨病変の進行は病気の初期に特に速いことが知られていますので、この点は特に重要です。一方、骨病変の進行があまり早くないと考えられる患者様には有効率が中等度以下の薬から始めたほうがより安全です。こうした薬剤でも改善されることが少なくないからです。
抗リウマチ薬には直接痛みなどの症状を改善する効果はありません。したがって、抗リウマチ薬の効果が現れるまでには、症状を改善する薬を別に用いなければなりません。つまり、関節リウマチの治療は、病気の進行そのものを抑える薬と症状を改善する薬の二本立てとなります。症状を改善する薬剤には非ステロイド抗炎症薬とステロイド薬があります。ステロイド薬は症状を改善する効果は強いのですが、様々な重大な副作用があります。特に骨をもろくする副作用(ステロイド骨粗しょう症)は、関節リウマチの患者様にとって非常に大きな問題となります。関節リウマチでは元の病気だけでも骨粗しょう症の傾向が現れがちです。さらに、関節リウマチによる機能障害の可能性があり、これに、骨粗しょう症による機能障害が加わると、さらに重度な機能障害(寝たきりの状態など)に陥る危険性が高くなります。このため抗リウマチ薬が用いられるようになる前までは、関節リウマチにはステロイド薬を用いてはならないと考えられていました。しかし、近年、抗リウマチ薬の進歩により関節リウマチ自体の経過が改善されるようになったことから、抗リウマチ薬の効果が出るまでに用いることは、患者様の生活の質の向上の観点からも、むしろ好ましいという考え方も出ています(橋渡し療法)。しかし、それであっても、ステロイド薬の副作用は無視できないとする立場もあります。当院では、ステロイド薬はできるだけ用いない方針をとっています。非ステロイド抗炎症薬はステロイド薬に比べ、連用による副作用ははるかに少ないといえますが、消化管に対する副作用(胃・十二指腸潰瘍など)には十分な注意が必要です。日ごろ胃腸管の調子があまりよくない方や、胃・十二指腸潰瘍の既往のある方は医師にお伝えください。
(*)現在用いられている抗リウマチ薬(薬品名(商品名))
生物学的製剤
インフリキマブ(レミケード)
エタネルセプト(エンブレル)
効果(副作用)の高い薬剤
メトトレキサート(リウマトレックス、メソトレキセート)
比較的効果(副作用)の高い薬剤
レフルノミド(アラバ)
タクロリムス(プログラフ)
シクロスポリン(ネオーラル)
中等度の効果(副作用)の薬剤
ブシラミン(リマチル)
サラゾスルファピリジン
(アザルフィジン、サラゾピリン)
注射金剤(シオゾール)
Dペニシラミン(メタルカプターゼ)
比較的効果(副作用)の低い薬剤
ミゾリビン(ブレディニン)
アクタリット(オークル、ムーバ)
経口金剤(オーラノフィン)