多発性筋炎/皮膚筋炎は筋肉と皮膚に炎症が起こってくる病気です。中年の女性に多い病気ですが、若い人にも、男性にも見られます。
筋肉の炎症の結果、筋力の低下が現れてきます。階段や坂道を登るとき、足が重く登りづらくなったり、重いものを持ち上げることが困難になったりします。首の力が落ちてくることも特徴の一つで、上を向いて起き上がれなくなります。場合によっては飲み込む力が弱くなったり、発声がしにくくなることがあります。筋肉の痛みを自覚することは約半数に認められます。皮膚の症状としては、顔や手足（とくに、関節の部分）にややくすんだ赤い発疹が出ます。この発疹は非常に特徴的なもので、皮膚の症状からだけで病気の診断をすることができます。
検査では筋肉の炎症を示す検査異常が現れます。とくに、筋肉の細胞が壊れて、細胞の中にあるＣＫ，ＡＳＴ，ＡＬＴ，ＬＤＨ，アルドラーゼといった蛋白が血中で増えてきます。また、筋電図やＭＲＩという検査も行われます。診断を確定するために、筋生検といって筋肉の組織を一部とって顕微鏡で調べる検査をします。
多発性筋炎/皮膚筋炎では筋肉と皮膚以外にも、関節や心臓、肺などにも病気が起こってくることがあります。特に肺の病変（間質性肺炎）には注意が必要で、皮膚筋炎としての皮膚症状があり、筋炎の程度が軽く、急性に起こる間質性肺炎は命に関わる場合が少なくありません。早期からの強力な抗免疫療法が必要になりますが、結果的に亡くなられる場合があります。
また、多発性筋炎/皮膚筋炎では悪性腫瘍の発生が多いことも知られています。ことに高齢者（50歳以上）、男性、皮膚筋炎では合併の危険性が高くなります。多発性筋炎/皮膚筋炎の診断に際しては、悪性腫瘍の検索も必要になります。
多発性筋炎/皮膚筋炎の治療にはステロイド薬が用いられます。ステロイド薬で効果が不十分な場合には免疫抑制薬も用いられます。また、近年、大量ガンマグロブリン静注療法が非常に有効であることが知られてきました。ただし、現時点では、保険での治療はできません。
適切な治療により大多数の患者様が普通の生活を送れるようになって来ましたが、急性の間質性肺炎や悪性腫瘍を合併した患者様の中に、治療を尽くしても、亡くなる症例がまだ見られます。