強皮症はかつて進行性全身性硬化症と呼ばれていました。しかしこの病名から「進行性」とういう部分が削られました。これは、この病気がかつて考えられていたような進行性の病気ではなく、症状の改善も見られる疾患であることがわかってきたことによります。
中年の女性に多い病気ですが、若年者にも、男性にも見られます。
強皮症の病変には３つの特徴があります。すなわち、硬くなること（硬化、線維化）、循環障害、実質組織の萎縮です。侵される組織には皮膚、消化管、肺、腎臓、心臓があります。
皮膚の症状では皮膚硬化（皮膚が硬くなる）と循環障害が生じます。循環障害の結果、手足が冷たくなったり、青紫になったり、白くなったり（レイノー現象）します。こうした症状は寒さの刺激で誘導されます。また、指先に傷ができることがあります。手を暖かくし、傷をつけないことが大切です。
消化管の症状では実質組織（神経や筋肉）の萎縮が前面に立ちます。この結果、消化管の動きが低下します。食道では飲み込みづらいという症状が出ます。また、胃と十二指腸の間の締り（括約筋の働き）がゆるみ、胃の内容物が食道に逆流することにより逆流性食道炎が生じます。この結果、胸焼け、みぞおちの痛みなどが起こりす。腸の症状として便秘や下痢を認めます。
肺では間質性肺炎という肺の炎症が起こります。から咳や、息切れの原因となります。急速に進行する場合には薬物治療（ステロイドや免疫抑制薬）が必要となりますが、大多数の患者様では進行しないのが一般です。
腎臓に病変を起こることはまれですが、いったん生じると、高度な高血圧や急速な腎機能の低下を示すことが多く（強皮症腎）、緊急の治療が必要となります。かつては命に関わる病変でしたが、最近は、治療が奏功する例が多くなっています。
心臓の症状としては、心臓の力の減弱（心不全）、不整脈、冠動脈病変が認められます。
強皮症の治療では、病気そのものに対し有効な薬剤は知られていません。したがって、強皮症の治療は対症的な治療が中心になります。手の循環障害に対しては循環障害改善薬、逆流性食道炎にはプロトンポンプ阻害薬が用いられます。